カラコロカラコロ。木漏れ日の小道を人間3人と自転車2台がゆるりと抜ける。いつも口うるさいも今日はいつも以上に饒舌で、そんな彼女の相手をする栄口も、なんだかんだで満更でもなさそうな様子である。とまあそんな2人のわきから数歩下がってあるいているのが(これでも空気を読んでるつもり)、このオレ、泉孝介である。
(をちらりと横目で見つつ)、はあとため息をついた。……こいつの緩みきったあほ面といったら。はあ。またため息。見てわかるようにたぶん、いやきっと、こいつは栄口のことが好きだ。一喜一憂の毎日。そんなけなげな幼馴染の恋を、少なくともオレは応援してやろうと思っている。……一応。今のところは。たぶん。
「? ちょっとお、こーすけ聞いてるの!」
「聞いてるよ。っと、お前がオレんちの風呂でうんこもらしたことだろ」
「ちっがあーう!誰もそんなこと言って、ふざけ、……ワアアア栄口くんちがっこれは小学生のときで、ってああああもうなんで笑ってるのお?!」
「えっいや笑っては、……!」
「それはそれでこまるいっそ笑ってえ」
とまあそんな具合にがじたばたと暴れるので栄口とオレはゆるやかに自転車を左右にはなし、その攻撃から身を守ることに撤した。なんで逃げるのお!と追いかける(否定はしないのかよ!)(いやたしかにうんこ漏らしたのは本当だけど)。しかし当の本人は、数歩栄口の方に行ったかと思うとすぐさまこちらに突進。おいおい普通追いかけるならむこうだろバカ!ほんとバカ!バカ!
「(バカなとこもかわいいんだよ!!!)」
「孝介がぜんぶわるいんだからね!弁解を所望します!」
「うっせバカ」
「はあ! ……アイタッ」
「栄口こまらせんな、あっち行け、もー」
「(たたあ、べちんて!顔べちんて!)」
栄口くんきいてよ!こーすけがあ、との声。栄口はちょっと困ったような顔をして、その小走りの足が追いつくようにすこしだけ自転車を押すはやさを落とした。カラカラと景気の音がスローテンポに変わる。オレはフンと鼻をならし、2人とは逆にすたすたと足早に進む。オレは大人だ、空気の読める男なのだ。……とか、そんかかっこいいことは言えないけど。
「(きいてるとなんかむかつくんだよ……!)」
「赤くなってないし平気だよ」
「でも、でもでも孝介がね、」
「(くすくす)さんは元気だなあ」
「アッなんでそこで笑うのよちょっとー!」
くそ。あんなにデレデレしやがって、くそくそくそ!オレは冷静を装いつつ、腹の中を煮えきらせて自転車を押した。「! おい、泉どうしたんだよー」。のんきな栄口の声。あいつのことは嫌いじゃなけど、今だけはちょっと腹が立った。なんでもねー。ぶっきらぼうなオレの声。
「こーすけ機嫌わるいね!」
スウがからりと笑った。ったく、誰のせいだっつーの!(人の気もしらないで)。そのまませかせかと右折する。コンビニでてきとうに時間をつぶして帰ろう。せめて幼馴染の恋路を邪魔しないようにしなくては。そう、自分をなだめることにした。本当はちげーけど。
「あれ、泉コンビニいくの?」
「おー」
「(2時28分かー……)オレねーちゃんに頼まれごとあるから先いくわあ」
「エッ栄口くん寄らないの!」
「うん 悪いねー」
「そっかー……」
「はは、あ、さんはどうするの?帰るなら途中まで送っていくけど」
「!」
の動きが、一瞬とまった。まるで電池の切れたおもちゃみたいに。いやすぐに戻ったけど。けど、なんだか欠陥があるみたいで動きはカチカチだった。……わっかりやす。
「じゃあ栄口、こいつ頼むわー ……あ、に襲われんなよ?」
「な!」
「?!」
ふは、いい気味だ。そのままぎこちない雰囲気のまま残り数十メートルを味わえ!バカ!オレはひらひらと手を振りやる気のない店員の声を聞きつつ雑誌コーナーへ立ち寄った。窓からは予想した通りの栄口とが2人でギクシャクしながら歩きはじめていた。ふん。いいんだ、これで。どうせオレはただの幼馴染。彼氏でもなんでもないただの、ただの、
「こーすけっ」
不意に、声がした。どきりと、心臓が高鳴った。身体が、はねた。おいおいうそだろ、なんだこれなんだこれなんだこれ、なんだこれ!
「、お前なにして……!栄口と帰ったんじゃ、なあ、おい、」
「んふふ、孝介がわたしのかくれたところでえろ本でも読んでるんじゃないかと思って」
「読んでねーよ(うわ、うわ、うわ)」
「ジャンプかよ。ワンピースね、あついね」
「そうじゃなくて」
「だって!」
だってえ……。ふと、となりに立つが少しだけちいさくなった(気がした)。というか、ぼそぼそとしゃべるなよな、らしくない。うん?とかがんで耳を傾けたら、「あのね」、なんて。これ以上栄口くんといたら心臓がこわれちゃうもん……!はは、さいですか。
「今日はね、いっぱい話せたからもういいのー」
「あっそ(期待したオレがバカだったよ!)」
「はあ、しあわせ、しあわせ……」
「もういいよ」
「ふふっ」
かるく頭をなでてあしらったらが目を細めてわらうので。とにかく、まあ、今ぐらいはちゃんとした幼馴染をしてやろうかなと。思う。ああ、
これがほんとの
四月バカ
(オレってこいつにつくづく甘い!)
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