さん!そう名前を呼ばれて振りかえるその先に、ぴょこぴょこはねる彼がいた。はねるっていくか駆けてくるっていうのが適切なんだろうけど。でも、そんな感じ。まるで飼い主を見つけたときの子犬みたいに見えないしっぽを振ってこちらに来る。おいで。わたしは取り込んだばかりの洗濯物を小脇にかかえて、彼がとなりに来るのを待った。


「あれ、今は」
「休憩中なんです。なんか手伝えることがあったらな、と思って!」
「わわっそれはありがたい!にしてもやるなあ、立向居くん」
「? なにがです?」
「(こそっ)これで女の子のハートもキャッチだね」
「か からかわないでください!」
「……あ、わかったの?」
さん得意げな顔してます。あとそれ、うまくないです」
「う、きびしいね……」


もう、さんたら……。立向居くんがちょっぴり呆れたような顔をする。わたしはそれをけらけらと笑い飛ばし、それからぱっぱと洗濯かごにタオルだとか代えのユニフォームを投げ込んだ。やんわりとひろがる洗剤のかおり。わたしの好きなにおい。そしてそこに伸びた手は、


「? なにしてるの」
「かわりに運んであげようと思って。さんいつもふらついてますし」
「あー立向居くん口悪いなあ」
「わっちがいますって……!そういう意味じゃないです」
「ふうん?」
さんてばー」


立向居くんがあんまりにもふにゃふにゃとするのがおもしろくて、ついついこうからかってしまう。根がまじめなんだよなあ、なんて感心しつつ、だからすぐ綱海にへんなことを吹きこまれても信じてしまうんだろうなと一人で納得。「ほら行くよー」、なんて掛け声ひとつでうれしそうに返事する彼はとてつもなく、すんごくかわいかったのです。


「……わたし、立向居くんみたいな弟がほしかったなあ」
「俺、ですか」
「うん。真面目だし言うこときいてくれるしかわいいし、わたし一人っ子だからあこがれちゃう。……あ、うちくる?」
「い、行きませんよ!もー……それに俺、さんの弟なんてちょっとやです」
「ええひどいなあ、案外たのしいかもよ」
「そりゃあそうかもしれませんけど、」
「ならいいじゃない!おいで、うちはひろいよー」


そうじゃなくて。そう答える彼の顔はすこし大人びていて。うん?わたしはその雰囲気のちがいにおろどき、戸惑って思わず声がうわずったのだった。(だって、こんな立向居くん、立向居くんじゃないし……!)。


さん」
「あ、……はい」
「俺はさんが好きなので正直弟とかになると世間体とかそういうのがいろいろと大変になっちゃうのでその……ごめんなさい!」
「(……)ねえ立向居くん」
「なんですか?」
「それはわたしに告白してるってこと……」
「!」


みるみるうちに彼の顔がかわっていく。それは赤かったり青かったりするけれど、どっちにしろ、もう、


「立向居くんかわいいです!(ぎゅっ)」
「えっえええっ?!ちょっとさん?!(かあああ)」
























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