「ー お前、放課後ひま?」
「今日?まあ帰宅部な私は遊ぶ予定しかないですけど」
「だよな。じゃあ、帰りつきあえ」
「はあ?どうも……」
とまあこんな具合にかるーくお誘いを受けて、ついてきたわけだけど。(ただのコンビニ巡りじゃあないの、こんなの……)。はあ。私はため息する。ちなみに泉は泉で「だりー」とかなんとかいって野球雑誌を読んでいる。ねえ、これってちょっとどうなの。彼女とのデート中にだりーって……。
「うし」
「(びくっ)うわ、なに 驚かさないでよ」
「もういこうぜ」
「え、ちょっと、……あ、いずみー!」
おいてかないでよー、とファッション雑誌を戻す私をおいて一人彼はすたすたと進む。もうこうなったら店員さんの「ありがとうございましたあ」だなんていう声はただのBGMでしかない。(もしかしたらそれすら意味がないかも)。ひいひいとその隣についた私に泉は「おせえんだよ」とひと言。
「普通は待ってあげてるものなの!」
「……しらね」
「(まったくもう)何さまのつもりなんだか」
「はいはい俺さま ……アイテッ」
「ふざけないの」
「……分かったよ、ほら」
「うん?」
「これ、なんだと思う?」
そういって泉がポケットから(正確にいえばポケットに入っていた財布の中から)一枚の紙をとりだした。ん、と差し出されたそれを好奇心でひらく。……やけにピンクい紙だなあ。そう考えたところで、わたしはばっと顔をあげた。
「わ、わわっ いずみ……!」
「(くす)やるよ、それ。お前アイスすきだろ?」
「わあーい、ごちそうさまです!アイスただ券!」
「よろこび過ぎ」
泉がすこし困ったように笑う。(その顔におもわず顔が赤くなったような気がしたけれど)私はいそいそと魔法の紙を財布にしまった。なくさないように、なくさないように。
「あ、ねえ、このまま寄ってかえろうよ」
「あー……うん、別に構わないけど」
「よし!」
「(単純……)」
私が泉の腕をぐいと引っぱると、今度は彼が「うおっ」と驚く。「ちょ、おい!恥ずかしいから人前でそういうことするなって」。視界のかなり端の方で彼の真っ赤になった顔がうつる。お返し。いい気味だ。(そこで私がにやりと笑ったのをうしろの彼が見ていたことなんて、そのころの私が知る由もなかった)。
あか、ピンク、黄色にブラウンのチョコレートアイス。どれもかわいくて、おいしそう……迷いに迷った上で私がえらんだのはいちごキャラメルのアイス。なんだかんだで泉もちゃっかりとチョコミントを買って、ちかくのベンチで一休み。うん、これぞほんとの放課後デート。
「(んふふっ)泉さいこう、ちょうすきかも」
「ば、ばっか、 お前それは俺じゃなくてアイスに言ってんだろ」
「あは、そうかも」
「……まったく(いろいろと心臓にわるいんだよお前は!)」
「ああしあわせ」
しあわせすぎてこわいわ、と言ったら泉に「あほか」とつっこまれてしまった。そのままチョコミントのそれをてろっとなめる彼。泉がそんなかわいいアイスもってたら女の子みんな驚くだろうなあ(いや、よろこぶか)。
「? なんだよ」
「なあんにも?ちょっと泉がかわいいの食べてるなあって」
「うるさい。お前たってそんな乙女っぽいの食ってるくせに」
「ほっといてください!」
ああちょっとでも見直したりした私がばかでした……!もう泉なんかしらん、と目の前の(彼曰く)乙女っぽいアイスをかじる。がり、というまだ少し凍りかけの冷凍いちごを噛み砕く音。
「(……くやしいけど、いちごキャラメルに罪はない。うん)」
「……あ」
「(だからゆっくり味わって、それで、)」
「、そこ、」
「うん?」
「ピンクいのがついてる」。そういうのと同時に泉は私の髪をよけて、はむっと。キスをした。(な、な、な……!)。びっくりしすぎて思わず手からアイスが落ちる。
「あっぶね……、気をつけろよ、ったく」
「だって、そんな……!(いまここ、アイスついてなかったし)(ちゅっていったし……!)」
「なんつーあほ面してんだ、お前」
「なん、で」
「はあ?だから口について、……いや、さっきの仕返し」
「……?」
「だからさっきの仕返しだってーの」
そう言って私の腕をかるく引っぱる彼。さっきってそうか、アイス屋さんにいくときの……!泉から落としかけたそれを受け取りながら、ああもうなにやってるんだか自分、とあついほっぺたを押さえる。もう一度、とよばれて彼の方をみると、してやったり、というような泉の顔が。……ちょっと、もう、……!
きららかすぎる青春期は
「泉はいつだってうそつきだ!」