だらだら。だらだらだらだらだらだら。本当にそんな言葉がよく似合う。日曜日の午後のわたしはいつだってこんな感じだ。特に何をするわけでもなく、ただぼうっと時間を無駄づかいする。(ああ、なんでしょう このやるせなさは!)。

「だからちょっと。やめてくれない、晴矢」

わたしがそう言うと、ぴくりと一瞬だけ彼の動きが止まる。まあそれもすぐに終わってしまったけれど。とにかくわたしはうんだりとしていたのだ、彼の暇つぶしに付き合わされることには。

「なんだよ、つれねーなあ」
「あっそ、いいよ別に。わたしは眠いんだから邪魔しないで」
「俺は眠くねえの」
「(なんだそれ……)そんなの晴矢の勝手じゃないの」

ああもう面倒くさい。わたしはソファで寝がえりを打ち、ごろりと彼に背を向ける。「なんだよ、感じわりー」。そう言いつつもどこか面白がっているようなその口調。わたしは知らんぷりを決め込もうと膝に頭をうずめる。……う、おもい……。
どうして。そんなの理由は決まっている。彼が、春矢がわたしにもたれかかってきたのだ。

「ちょっと……」
「んー」
「(いや、んーと言われても……) なに、甘えたいの」
「んー」
「ええ……? ごめん意味わかんない」

でも、こんなのって珍しい。いっつも人に食ってかかる晴矢なのに。(ほんとに甘えたいのかな)(いや、まさかね) そうは言うものの、わたしも結構満更じゃなかったりする。彼を押し返そうと背中にかけた体重をちょっとだけゆるめて、少しだけ、ほんの少しだけ彼を受け止めてあげた。

「お、抵抗しなくなった」
「うるさい。 ……もう、わたし寝ちゃうから」
「んだよお前はー」
「ちょっと、重いったら!」
「なあ、」
「……。」
「なんで黙るんだよ……」

おい聞いてんのかこらー、晴矢の声もまただらだらしている。まあその気持ち、分からないでもないけど。(だってなんだかかったるいし)。とまあそんなことを考えていると、くしゃり。だなんて。晴矢がわたしの髪をなでた。……だからなんなの、ほんとに(まあ別に嫌じゃないからおこらないけど)。

「(ふはっ)、猫みてぇ」
「なにそれ」
「お前の髪ふわふわしてるから気持ちいいんだよ」
「……あっそ」
「照れんなって」
「照れてないー!」

わたしが彼の方をにらみつけてやると、晴矢はもう一度ふはっと笑った。くやしいけれど、ちょっとかっこよかった。ああもう女の子はこういうのに弱いんだってば。わたしはきいいと発狂し(ここで彼は怪訝そうな顔をした)、そのままうしろにばふんと倒れる。

「もう晴矢めんどくさすぎ!」
「うおっ 言ってることとやってることが逆だ、ばか!」
「ばかじゃないよ、わたし勉強はできるもの」
「そういう意味じゃねえってば」
「……あー落ちつく」
「……(もうなんなのこいつ……)さいですか」

うん。わたしはそのまま軽くすんと彼のにおいを吸いこんで、その背中にあたまをのせた。「え なに、寝んの」。その通りだと肯定の意味を込めて顔をうずめた。もう一度晴矢がわたしの髪をなでる。さらさらさらさらさら。ちょっとだけごつごつとした指。

「晴矢」
「? なんだよ」
「……ううん、おやすみ」
「うん、おやすみ」





おやすみ



キティ



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