ストローをグラスの中でもてあそびながら、わたしはソファに沈む。夏の午後ってちょっと時間の使い方がへたになるなあ、なんてぼやきながら(だってかったるいんだもの)。となりで同じようにごろごろと横になるリーマスがはは、とわらう。
「、君は特にね」
「なあに言ってるの、わたしとあなたも同じもんです」
「そうかな」
「そうだよ、だってリーマス、こんなにだらだらしてる」
彼の上からわたしがぐたーっと体重をかけると、「わ!」なんていうふうにリーマスが悲鳴をあげた。もちろん、わたしの下の方で。「ちょっと、何するんだよ!」。えへへと頬を緩ませるわたしからぎゅうぎゅうに押されるのを抵抗しながら、男の子の力でおしかえす。ぐーっなんていう具合に。
「きゃ!」
押し負けしてしまったわたしは、あえなく頭から転倒した(アイスティーこぼすところだった!)。形成逆転、だね?とリーマス。しょうがないなあと手を差し伸べておこしてくれる。ちょっとくやしいけれど、その手を取った。
「まったく、急にふざけるから」
「うるさい。少しでも時間をつぶしたかっただけだもの」
「……それってなんか理解できない」
それで結構。わたしはつんと澄ましてみせる。それから、ああ、ひまだなあと時代を感じさせるような赤い暖色系の天上を見上げた。
「チェスでもする?」
「えー、それはいや。リーマスに敵うはずないよ」
「はは、それもそうだ」
「おいこら」
「(くすくす)じゃあ手加減してあげようか」
まるで子供をなだめるような口調。リーマスはいつもこうなんだ、何かとわたしを子供あつかいしてくる。それがちょっとくやしくて、結構、と口を尖らせてやった。「チェスなんてつまらないじゃないか」。次の提案をもとめるとうーん、リーマスが困ったように頭をかいた。
「じゃあ読書は?」
「やだ」
「ひるね?」
「やだ」
「散歩?」
「やだ」
「アフタヌーンティー?」
「やだ」
じゃあ何ならいいのさ?もうお手上げだと言わんばかりに彼が肩をすくめる。わたしも別になにかしたい、ってわけじゃあなかったから、残念ながらアイディアなんかなかった。んー……首をかしげる。
「……君自身がなにしたいのか特にないんだね」
「……そういうことになる」
「もう、君ってやつは」
「だってー……」
がじがじとストローを噛むわたし。行儀がわるいよ、と彼がたしなめてくれたけれど、癖なんだからしょうがないでしょ。ちらりと歯形のついたストローを見た。それから、ぼそりとつぶやく。「ねえ、噛みついてもいい?」。彼が目をぱちくりとさせる。
「…、気は確かかい」
「確かじゃあないかも、うん。びっくりした?」
「当たりまえだろ。心臓とびあがるかとおもっちゃったよ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。その時はわたしがリーマスの心臓を押さえてあげる」
……そういう問題じゃないんだけどなあ。リーマスが呆れて言う。わたしはちょっと得意になってふふ、と笑ってみたが、彼は渋い顔をしてみせた。(ああ、なんて無駄な時間の使い方!)。
「…君に暇をあたえてしまうといろいろと面倒になるねえ」
「まあね、よくお分かりで」
からからと返すわたしの頭を、ぽんぽんとリーマスが撫でた。はいはい、分かったったら。そんな感じのする仕草。だけどそれがどこか心地よくて、ほんの少し胸がきゅーっとしてしまった。ほんのりと暖かい頬を近づけて、わたしはねえ、と彼にするりと近づく。
「……やっぱりわたし、リーマスといちゃいちゃしたいや」